VA-ECMOとPCPSの違いって何ですか?
このような疑問を持っている学生さんや看護師さんが意外と多いです。
実際に何度も質問を受けています。
PCPSという言葉はよく聞くと思いますが、VA-ECMOという言葉はあまり聞かないと思います。
今回は、VA-ECMOとPCPSの違いも含めてVA-ECMOについて解説します。
- VA-ECMOとは何か
- VA-ECMOとPCPSとの違い
- VA-ECMOの適応は
- VA-ECMOの禁忌は
- VA-ECMO中の管理について
本記事の執筆者
VA-ECMOとは
VA-ECMOとは、V(静脈)から脱血(血液を体外へ取り出す)して、A(動脈)へ送血(血液を送り込む)する方法。
大腿静脈に脱血の管、大腿動脈に送血の管を入れます。
主に、心臓のサポートを行う目的で使用します。
V(静脈)からA(動脈)へ血液が流れるからVA-ECMOというよ。
VA-ECMOで使用する脱血の管(脱血管)は大腿静脈という足の付け根にある血管から挿入します。
実はその脱血管はもの凄く長く、足の血管から心臓に向かって約55cmも挿入されています。そして脱血管の先端は心臓の右心房にあります。
VA-ECMOで使用する送血の管(送血管)は大腿動脈という足の付け根にある血管から挿入します。
送血管は脱血管とは違い短い管ですが、足の付け根から心臓に向かって約18cm挿入されています。
何で脱血管の長さがそんなに長いの??
良いところに気付きましたね。
脱血管が長いのには理由があります。
VA-ECMOでは心臓のサポートを行う為に、1分間に4L程度の流量が必要になります。
それだけの血液流量を維持するには十分な脱血量の確保が必要です。
ここで質問です。
体内の静脈に流れている血液は、最終的にどの臓器に戻りますか?
全身を巡った血液は最終的に心臓に戻ってきます。
その通りです!!
正確には心臓の右心房に戻ってきます。
もう気付いたと思いますが、十分な脱血量を確保するためには心臓の右心房から脱血することが望ましいです。
大腿静脈から脱血管を挿入して先端を心臓の右心房に留置するため、脱血管が長くなっています。
なるほど、理解できました。
VA-ECMOとPCPSの違い
VA-ECMOとPCPSの違いをはっきりさせると、
心臓のサポートをすることは同じで、言葉の表現が違うだけ。
ということになります。
ECMOとは、ExtraCorporeal(体外式の)Membran(膜型人工肺)Oxgenation(酸素化)の頭文字。
PCPSとは、Percutaneous(経皮的)Cardio(心臓)Pulmonary(肺)Support(補助)の頭文字。
どちらも心臓をサポートするという意味が含まれるよ。
海外ではPCPSという呼び方ではなく、ECMOで統一されています。
日本では逆にPCPSという呼び方が主流ですが、近年ECMOという呼び方に統一している施設が多いようです。
ちなみにPCPSと呼んでいるのは、日本と韓国だけ。
VA-ECMOの適応
- 繰り返して起こる心室細動(Vf)や心室頻拍(VT)患者
- 冠動脈形成術(PCI)のサポートやブリッジ
- 心筋梗塞、心筋炎、開心術後の低心拍出症候群(LOS)
- 心肺停止蘇生例(ECPR)
- 急性肺血栓塞栓症によるショック
近年、ECPRでVA-ECMOを導入する症例が増えてます。
VA-ECMOの禁忌
- 大動脈解離
- 重度の大動脈弁閉鎖不全症
- 非可逆的脳障害
- 悪性疾患の末期状態
- 出血性ショック
VA-ECMO中の管理について
下肢虚血について
大腿動脈に送血管を挿入しているため、末梢血管が送血管に遮られ血流が途絶してしまう(下肢虚血)可能性があります。
組織に血液が供給されなくなると、次第に壊死していきます。最悪の場合、下肢切断という事態にも陥ります。
それを予防するために足背動脈の血流確認を行います。
送血管が挿入されている足背動脈の血流を触診やドップラー血流計を用いて確認します。
下肢虚血が疑われる場合や認められる場合は下肢送血が必要となり、送血管より末梢側に細い管を挿入し順行性に追加送血します。
抗凝固薬について
一般的に未分画ヘパリンを使用することが多いです。未分画ヘパリンは肝臓で代謝され腎臓で排出されます。
また、血中の半減期は30~60分で、プロタミンで中和できる利点があります。持続投与量は10~20U/kg/hから開始すると定義されています。
抗凝固のモニタリングはACT(活性凝固時間)とAPTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)を組み合わせて使用されています。
未分画ヘパリン使用時の目標ACT値は180~200秒と定義されていますが、患者さんの病態や施設ごとで目標ACT値が違います。
目標APTT値は基準値の1.5~2.5倍であれば安全かつ効果的とされています。
圧モニタについて
回路内圧をモニタリングすることで圧力の変化がわかり、回路に生じる様々なトラブルを発見することができるため圧モニタを装着します。
代表的な圧モニタの測定部位を示すね。
- 脱血圧・・・血液ポンプ手前の回路圧
- 人工肺入口圧・・・人工肺手前の回路圧
- 送血圧・・・人工肺出口の回路圧
ECMO血液流量 | 脱血圧 | 人工肺入口圧 | 送血圧 | |
脱血不良 | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ |
送血不良 | ↓ | ↑ | ↑ | ↑ |
人工肺不良 | ↓ | ↑ | ↑ | ↓ |
血液ポンプ不良 | ↓ | ↑ | ↓ | ↓ |
回路内圧をモニタリングすることで、いち早くトラブルに気付くことができるよ。
VA-ECMOのオススメな本
ECMOを勉強するのにオススメな本を3冊紹介するね。
まとめ
- VA-ECMOとPCPSは言葉の表現が違うだけで同じ
- 大腿動脈に送血管、大腿静脈に脱血管を挿入する
- ECPRで導入する症例が増えている
- 下肢虚血に注意が必要