IABPとは?原理・タイミング・波形・適応を臨床工学技士がわかりやすく解説

IABPとは 原理・波形・タイミングを初心者向けに解説するアイキャッチ画像

「IABPって難しい…」
「inflationやdeflationのタイミングが覚えられない…」
「波形の見方が苦手…」

新人の頃、多くの人がここでつまずきます。

IABP(大動脈内バルーンパンピング)は、循環補助装置の中でも基本となる重要な医療機器です。
しかし、

  • 原理
  • タイミング
  • 波形
  • 合併症
  • ECMOとの違い

など、理解する項目が多く苦手意識を持つ方も少なくありません。

この記事では、大学病院で実際にIABP管理に関わる臨床工学技士の視点から、

  • IABPとは
  • 原理
  • 波形とタイミング
  • 適応
  • 合併症
  • 看護・観察ポイント
  • ECMOとの違い
  • 離脱方法

まで、初心者にもわかりやすく解説します。

目次

IABPとは

IABPとは、

Intra Aortic Balloon Pumping
(大動脈内バルーンパンピング)

の略です。

大動脈内に挿入したバルーンを、

  • 拡張期に膨らませる(inflation)
  • 収縮期にしぼませる(deflation)

ことで循環補助を行います。

IABPの目的

IABPの主な目的は以下です。

目的内容
冠血流増加心筋へ血流を増やす
後負荷軽減心臓の負担を減らす
心拍出量補助循環を補助する
心筋酸素需要低下心臓を休ませる

どんな患者に使用する?

主に以下の患者に使用されます。

  • 心原性ショック
  • 急性心筋梗塞(AMI)
  • CABG周術期
  • 重症心不全
  • PCI中の循環補助

特に、

「心臓は動いているが、十分な循環を維持できない」

場合に有効です。

IABPの挿入位置を初心者向けに解説した医療図解。左鎖骨下動脈分岐部より末梢、腎動脈より中枢にバルーンを留置する位置を示したイラスト。

IABPの原理

IABPの原理は「拡張期に補助する」こと

IABPの最大の特徴は、

「拡張期圧を上昇させる」

ことです。

拡張期 inflation(バルーン拡張)

拡張期にバルーンを膨らませます。

すると、

  • 大動脈圧上昇
  • 冠動脈血流増加
  • 心筋酸素供給増加

が起こります。

これを

diastolic augmentation(拡張期補助)

と呼びます。

収縮期 deflation(バルーン収縮)

収縮直前にバルーンを急速にしぼませます。

すると、

  • 大動脈圧低下
  • afterload低下
  • 左室駆出補助

が起こります。

結果として、

心臓が血液を送り出しやすくなる

のです。

IABPのinflationとdeflationの原理を解説した初心者向け医療図解
ひかるCE

IABPは“心臓を代行する装置”ではなく、“心臓を助ける装置”です!

IABPのタイミング

IABPで最重要なのはタイミング

IABPは、

「いつ膨らませるか」

が極めて重要です。

タイミングがズレると、

  • 補助効果低下
  • 心負荷増加
  • 血圧低下

につながります。

inflationのタイミング

原則

  • dicrotic notch直後
  • ECGではT波付近

です。

ここで拡張すると、
冠血流を効率よく増加できます。

deflationのタイミング

原則

  • 次回収縮直前
  • ECGではR波直前

です。

早すぎても遅すぎても効果が低下します。

IABP波形の見方

適切な波形

適切なIABP波形では、

  • augmentation上昇
  • assisted systole低下

が見られます。

IABPの正常波形とinflation・deflationを解説した初心者向け図解

タイミング不良でよくある波形

inflation遅延

  • augmentation低下
  • 冠血流補助不足

inflation早すぎ

  • LV afterload増加
  • AR増悪リスク

deflation遅延

  • 心負荷増加
  • assisted systolic pressure上昇

deflation早すぎ

  • 補助効果低下
IABPのタイミング不良を4分割で比較した図解。inflation遅延、inflation早期、deflation遅延、deflation早期による波形変化を初心者向けに示したイラスト。

実際の臨床現場では…

実際の臨床現場では、

  • 不整脈
  • Af
  • PVC頻発

でタイミングがズレやすいです。

新人が間違えやすいポイントは、

「波形だけでなくECGも一緒に確認する」

ことです。

IABPの適応

主な適応

疾患使用目的
心原性ショック循環補助
急性心筋梗塞冠血流改善
CABG周術期心負荷軽減
重症心不全補助循環
PCIハイリスク症例循環維持

IABPの禁忌

主な禁忌

禁忌理由
重症AR逆流増悪
大動脈解離解離進行
重症末梢動脈疾患下肢虚血リスク
大動脈瘤破裂リスク

IABPの合併症

最も重要なのは下肢虚血

IABPで最も注意する合併症は、

下肢虚血

です。

主な合併症

  • 下肢虚血
  • 血小板減少
  • 出血
  • 感染
  • バルーン破損
  • 塞栓症
IABPの主な合併症を初心者向けに解説した図解。下肢虚血、血小板減少、感染、出血、バルーン破損を示した医療イラスト。

現場でよく見るトラブル

実際の臨床現場では、

  • 足背動脈触知低下
  • 尿量低下
  • 血液混入アラーム

は特に注意します。

血液混入は、

バルーン破損

の可能性があります。

IABP看護・観察ポイント

観察で最重要なのは虚血評価

特に重要なのは、

  • 足色
  • 冷感
  • 足背動脈
  • SpO2

です。

主な観察項目

項目観察内容
穿刺部出血、血腫
下肢虚血、冷感
尿量腎血流評価
波形タイミング
アラーム駆動異常
体位屈曲防止
IABP装着患者の観察ポイントを初心者向けに解説した図解。波形モニタ、穿刺部、足背動脈、SpO2、尿量、アラーム、体位管理を示した医療イラスト。

体位管理

IABP挿入側の股関節屈曲は避けます。

理由は、

  • カテーテル屈曲
  • 血流障害

を防ぐためです。

臨床工学技士の役割

CEは「装置管理の専門家」

IABP管理では、
臨床工学技士の役割が非常に重要です。

主な役割

  • 始業点検
  • 駆動確認
  • 波形評価
  • タイミング調整
  • アラーム対応
  • トラブル対応

波形確認で重要なポイント

波形確認では、

  • augmentationが出ているか
  • assisted systole低下しているか
  • ECG同期できているか

を確認します。

新人が間違えやすいポイント

新人がよく間違えるのは、

「血圧だけ見て安心する」

ことです。

IABPは、

  • 波形
  • ECG
  • 患者状態

を総合的に評価する必要があります。

ECMOとの違い

IABPとECMOは役割が違う

IABPとECMOは、
どちらも補助循環ですが役割が異なります。

比較表

項目IABPECMO
補助方法圧補助血流補助
補助量少ない多い
酸素加不可可能
心補助軽度〜中等度重度対応
適応心不全重症循環不全

IABPの離脱方法

徐々に補助を減らす

一般的には、

  • 1:1
  • 1:2
  • 1:3
  • OFF

と段階的に離脱します。

離脱時の観察ポイント

  • 血圧低下
  • 心拍数増加
  • 尿量低下
  • 乳酸上昇
  • SvO2低下

を確認します。

実際の臨床現場では…

離脱時は、

「数値だけでなく患者状態を見る」

ことが重要です。

IABP離脱の流れとして1対1から1対2、1対3、OFFへ段階的に補助を減らす方法と観察ポイントを解説した図解

よくある質問(FAQ)

IABPとは何ですか?

大動脈内バルーンを用いて循環補助を行う装置です。

IABPは何を補助しますか?

  • 冠血流増加
  • afterload低下
  • 心拍出補助

を行います。

IABPとECMOの違いは?

IABPは心補助中心、ECMOは全身循環補助まで可能です。

IABPの合併症で最も注意するものは?

下肢虚血です。

IABP波形で重要なのは?

  • augmentation
  • assisted systole
  • inflation/deflationタイミング

です。

まとめ

IABPは、

  • 冠血流増加
  • afterload低下

によって心臓を補助する重要な循環補助装置です。

特に重要なのは、

  • 原理理解
  • 波形評価
  • タイミング調整
  • 合併症観察

です。

新人のうちは、

「波形を見るだけで精一杯」

になりやすいですが、

  • ECG
  • 血圧波形
  • 患者状態

を一緒に確認する習慣が大切です。

IABPは循環管理の基本となる装置です。
この記事が理解の助けになれば幸いです。

参考文献

  • 日本循環器学会:急性・慢性心不全診療ガイドライン
  • 日本集中治療医学会
  • AHA Guidelines
  • AACN Procedure Manual for Critical Care
  • Braunwald’s Heart Disease
  • 臨床工学技士標準テキスト
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