IABPの効果やタイミングを正しく理解していますか?
- IABPとは何か、挿入部位、留置部位を説明します
- IABPの効果やタイミングを説明します
- IABPの適応や禁忌、合併症を説明します
本記事の執筆者
IABPとは
IABP(intra-aortic balloon pumping)は、バルーンのついたカテーテルを胸部下行大動脈内に留置し、心臓の拍動に合わせてバルーンの収縮と拡張を繰り返すことで心臓を補助する圧補助循環装置です。
日本語で、大動脈内バルーンパンピングと表現します。
IABPは、心臓の収縮期にバルーンが収縮し、拡張期にバルーンが拡張するよ。
挿入部位
バルーンのついたカテーテルは大腿動脈から経皮的に挿入されます。
ごく稀に、上腕動脈から挿入することもあります。
留置部位
頭に流れる血管を塞がないように、左鎖骨下動脈から約2cm下部に留置
腹部臓器に流れる血管を塞がないように、腹腔動脈直上に留置
駆動ガス
バルーンを膨らますガスはヘリウムガスを使用します。ヘリウムガスは気体の中でガス移動時の抵抗が少なく、応答性がよいため使用されています。
ヘリウムガスは血液に溶けにくいので、血管内でバルーンが破れたら危険だよ。
IABPの効果
冠血流と脳血流を増やし、左心の後負荷軽減により心拍出量の増加と心筋酸素消費量を減少させる効果があります。
全身の組織灌流を改善させるよ。
ダイアストリック・オーグメンテーション
ダイアストリック・オーグメンテーション(diastolic augmentation)とは、心臓の拡張期にバルーンを拡張させることで大動脈内の圧が上昇することをいいます。
- 冠動脈血流の増加
- 脳血流の増加
- 腎血流の増加
- 平均動脈圧の上昇
シストリック・アンローディング
シストリック・アンローディング(systolic unloading)とは、心臓の収縮期にバルーンを収縮させることで大動脈の拡張期末期圧を低下させ、心臓が通常より低い圧で血液を拍出できることをいいます。
- 後負荷の軽減
- 心筋酸素消費量の減少
- 左心室の仕事量軽減
IABPのタイミング
IABPのバルーンを拡張させたり収縮させたりするタイミング設定は、とても重要です。
バルーンの拡張と収縮のタイミングは、患者さん自身の心電図波形や動脈圧波形で決まります。
バルーン拡張のタイミング
バルーンの拡張は、心臓の拡張初期に合わせるよ。
心臓の拡張初期とは大動脈弁閉鎖直後のことだよ。
動脈圧波形では、大動脈弁の閉鎖時(心臓の拡張開始時)にdicrotic notchという重複切痕ができます。
バルーン拡張のタイミングは、大動脈圧波形のdicrotic notchに合うように調整します。
バルーン拡張のタイミングが合えば、動脈圧波形がフタコブラクダのような山が2つできるよ。
1つ目の山が心臓の収縮期圧で2つ目の山がIABPの拡張気圧だよ。
バルーン収縮のタイミング
バルーンの収縮は、心臓の駆出直前に合わせるよ。
心臓の駆出直前とは左心室の収縮直後のことだよ。
バルーン収縮のタイミングは、バルーン拡張末期動脈圧が最低値を示すように調整します。
IABPの適応
IABPの適応は内科的適応と外科的適応に分かれるよ。
内科的適応
- 急性冠症候群(急性心筋梗塞、難治性不安定狭心症、重症心不全)
- 急性心筋梗塞の合併症(心原性ショック、心室中隔穿孔、僧帽弁閉鎖不全症)
- リスクが高いPCI中及びPCI後の補助
外科的適応
- 人工心肺離脱困難
- 開心術後の低心拍出量症候群(LOS)
- 高度冠動脈疾患の手術前予防
- VA-ECMO使用時の後負荷軽減
IABPの禁忌
- 重症大動脈弁閉鎖不全症
- 大動脈瘤
- 大動脈解離
- 慢性閉塞性動脈硬化症
- 大動脈の重篤な石灰化
- 重度の凝固異常
IABPの合併症
- 下肢虚血
- 出血
- 血栓塞栓症、臓器虚血
- 大動脈穿孔、大動脈解離
- 感染
- バルーンの破損
合併症を起こさないための注意点は下記の記事を見てね。
IABPのオススメな本
IABPを勉強するのに役立つ本を紹介します。学生さんや実習生さんも納得するわかりやすい本です。
まとめ
- IABPはバルーンのついたカテーテルを使用します
- 心臓の拡張期にバルーンが拡張、収縮期にバルーンが収縮します
- 駆動ガスはヘリウムガスです
- 冠血流が増加して、左心室の後負荷が軽減します