【学生でもわかる】心筋保護法について解説〜現役の臨床工学技士が教えます〜

心筋保護法について
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実習生さんからよくこのような質問を受けます。

学生

心筋保護法のレポートを書くとき参考になる本がなくて困ってます。

確かに心筋保護法について詳しく書いている本がないですね。

授業で使う人工心肺関連の教科書に少し書いているか、もしくは現場で働いている医療従事者向けの難しい本に書いているかぐらいです。

実際に私も実習中に心筋保護法のレポートを書くとき、参考にする本が無かったので苦労しました。

臨床工学技士

今回は学生さんでもわかる簡単な内容で、心筋保護について解説していきたいと思います。

この記事を最後まで見ると心筋保護法について理解できますよ。

そして実習中の学生さんの予習・復習に役立つはずです。

本記事のテーマ
  1. 心筋保護液の組成がわかる
  2. 心筋保護液の投与方法がわかる
  3. 心筋保護法の手技がわかる

本記事の執筆者

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目次

心筋保護の目的

心筋保護液について

心筋保護液は心臓手術を行う時に使用します。

なぜなら、心臓が動いていると安全に手術を行うことができないからです。

そこで心筋保護液の出番です。

心筋保護液の役割を示します。

心筋保護液の役割
  • 速やかに心停止を誘導する
  • 心筋虚血障害の軽減
  • 再灌流障害の軽減
臨床工学技士

役割を簡単にまとめると、心臓を止める役割と心筋を保護する役割があるよ。

では、心筋保護液は誰がどのようにして投与しているのでしょうか。

実は医師ではなく、臨床工学技士が心筋保護装置を使用して心筋保護液を投与しています。

臨床工学技士

人工心肺装置と併せて操作しているよ。

心筋保護液と組成

心筋保護液はミオテクターと呼ばれる薬剤を使用します。

ミオテクターの組成
Na+(mEq/L)120
K+(mEq/L) 16
Ca2+(mEq/L) 2.4
Mg2+(mEq/L) 32
HCO3(mEq/L) 10
Cl(mEq/L) 160
臨床工学技士

心筋保護液は高カリウム濃度になっています。

心筋保護液の投与方法について

心筋保護液の投与方法

心筋保護液の投与方法として順行性投与と逆行性投与があります。

順行性投与

順行性投与(antegrade delivery)とは、冠動脈の入口から順行性に心筋保護液を投与する方式です。

一般的に心筋保護液を注入する場合は順行性で投与します。

臨床工学技士

生理的な経路で心筋保護液を投与するので心筋保護の効果が高いよ。

メリット
  1. 心筋に対して適正な組織灌流量が得られやすい
  2. 冠動脈に狭窄等がなければ、冠動脈に均一に心筋保護液が灌流する
  3. 心筋保護液が生理的な経路で冠動脈を灌流する為、速やかに心停止できる
デメリット
  1. 冠動脈に狭窄がある場合、心筋保護液の灌流が均一にならない
  2. 冠動脈の空気塞栓を引き起こす場合がある
  3. 冠動脈の内膜損傷を引き起こす場合がある
  4. 大動脈弁閉鎖不全により逆流がある場合は、冠動脈に心筋保護液が十分に灌流しないので心筋保護が不完全になる

逆行性投与

逆行性投与(retorograde delivery)とは、冠静脈洞(冠動脈の出口)に専用のカニューレを挿入し冠静脈から逆行性に心筋保護液を投与する方式です。

臨床工学技士

冠動脈疾患の症例では有効な心筋保護を得られると言われているよ。

メリット
  1. 冠動脈に高度な狭窄疾患がある場合は、末梢へ確実に心筋保護液を灌流できる
  2. 冠動脈内の空気塞栓をwash-outできる
  3. 弁膜症手術における手術手技を中断せずに投与できる
デメリット
  1. シャントがあると心筋保護液を注入しても十分に灌流できず、効果が得られない
  2. カニューレの留置部位によっては右室への灌流が不足する場合がある
  3. 注入圧が高くなると心筋浮腫を引き起こす場合がある
臨床工学技士

順行性と逆行性のメリット、デメリットを理解して心筋保護液を投与することが大事だよ。

心筋保護法の手技について

心筋保護法の手技

順行性で投与する心筋保護法には2種類の手技があります。

順行性の心筋保護法
  • 大動脈基部にカニューレを挿入し投与する大動脈基部灌流
  • 左右の冠動脈の入口に直接カニューレを挿入して投与する選択的冠灌流
臨床工学技士

それぞれ解説します。

大動脈基部冠灌流

最も基本的な心筋保護の灌流法です。

大動脈基部に心筋保護液注入用のカニューレを挿入し、心筋保護液を投与します。

カニューレの種類
  • ベントライン付きカニューレ
  • ベントライン及び圧ライン付きカニューレ
臨床工学技士

施設によってどちらのカニューレを使うかバラバラです。

注意点
  1. 大動脈弁閉鎖不全症がある場合は有効な心筋保護が得られない
  2. 投与時の圧力が高いと大動脈基部や冠動脈が損傷する場合がある
  3. 投与時は大動脈基部の空気を除去してから投与する(空気塞栓予防)

選択的冠灌流

大動脈弁閉鎖不全症や大動脈解離など、大動脈基部を切開する症例に使用される灌流法です。

選択的冠灌流法のカニューレは先端の角度が異なる左用と右用があります。

臨床工学技士

左用が135°
右用が90°

カニューレのサイズは左右共に0.5mm間隔で準備されています。

臨床工学技士

左右共によく使うサイズは3.5mmと4.0mmだよ。

注意点
  1. 投与時の圧力が高いと冠動脈が損傷する場合がある
  2. カニューレサイズによって投与流量が異なる
  3. 投与時のカニューレ先端位置によって回路内圧が大きく変化する

まとめ

心筋保護法について
  1. 心筋保護液はミオテクターという薬剤を使用する
  2. 心筋保護液の投与法は順行性と逆行性がある
  3. 順行性の心筋保護法は大動脈基部灌流と選択的冠灌流がある
臨床工学技士

心筋保護が不十分だと、低心拍出量症候群(LOS)を引き起こす可能性があるので投与する際は十分に注意してください。

心筋保護について書かれている数少ない本を載せておきます。

臨床工学技士

興味があればのぞいてください。

心筋保護法について

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